今回は、S市立N中学校S先生の教室 “The Most Beautiful Thing” を紹介しましょう。
研究授業ではなく、NGO法人がカンボジアに開設した学校の校長さんが日本の英語授業を観たいと来日され、S先生が授業公開した教室を参観することができました。
この日の学習課題は下記の通りです。
(1)前時の復習
動画「What makes you happy?」における、自分についてのhappinessについて記述する課題の share を行う。
(2)ジャンプの課題
動画「The Most Beautiful Thing」のスクリプトを読み、内容を理解し設問に答えるとともに物語に対する自分の感じたことを書く。
共有の課題に相当する「What makes you happy?」のshareでは、年代によって幸せと感じることがこんなにそれぞれなのだということと、それを受けてクラスメイトが書いた自分の「幸せ」を聞いて、誰の書いた幸せかを考え共有し合います。とても個人的な表明ですが、それを共感し合いながらshareする姿は本当に温かくその場にいる人を「幸せ」にするものでした。
ジャンプ課題は、まさにドラマ(との出会い)です。
Short Film(動画) “The Most Beautiful Thing” がまさしくドラマティックですし、そのドラマと出合わせる授業デザインがドラマティックです。
ネタバレになってしまいそうで書けないのですが、このFilmは、二人の高校生主人公が自らの境遇を超えて出合うドラマ!! と言えるでしょうか。あるいは最後に、ある高名な障害者のことばがテロップで出ますが、「奇跡の人」と言われるその障害者の「奇跡」と似た奇跡が起こる!!
そのドラマの核心に出会うことがジャンプ課題と言っていいでしょう。
しかしS先生は、Short Film全部を最初からは観せません。まず前半を観せて、何が起こるかをグループで考えさせます。
S先生は、今年1月の学びの共同体全国大会「つくば」の中学校分科会で、動画を活用した英語授業の報告をしました。(実は、今回の生徒さんたちが1年生のころの授業です。)
そこでは3つの動画が用いられました。家族と思われる人間たちとバレーボールをする犬の動画、イルカと顔を見合わせてコミュニケーションする(ように見える)幼児の動画、そして“The Hospital Window”という感動的なShort Filmです。 “The Hospital Window”は病室を共にする二人の男性患者のうち窓に近い男性がそこから見える公園(?)の情景をもう一人の患者に話して聞かせるが、、、というShort Filmで、O・ヘンリーの「最後の一葉」を思い出させるような感動的なFilmです。しかし、最後にその設定そのものが崩れ去るどんでん返しがあり、強い感動を呼びます。S先生は、分割しつつもこの全部に出合わせ、考えさせました。
今回の“The Most Beautiful Thing”では、S先生は異なる出合わせ方をしました。はじめの部分を見せて設定がわかったら、続くドラマを自分たちでグループで想像して描くのです。
“The Hospital Window”は設定がひっくり返る事実に出会うことが強烈なドラマであったのに対し、“The Most Beautiful Thing”は主人公たちが設定を越えて踏み出し合い、出会うことが感動を生み出すという構造ですから、二人がその境遇の中で、どうなるの?? どうするの?? というドラマを生徒さんたちはグループで探求しました。
今回のS先生のデザインは、本当に余分なもののない、そして真正な出会いをデザインしたものと言えますし、それは坂本先生の英語教師としての大きな進歩の道筋を示すものでもあるでしょう。
温かくつながり、グループで協同で探求しつつドラマに出会っていく生徒さんたち!!
通常とは異なる意味で用いられる単語があります。 例えば “sign” 。英語が得意ではない生徒さんが「手話のことだ」と気づきます。
二人の間に生じるズレを、自分自身の日本語で表現しながら理解を深めていく生徒さんたち。
“sound” という単語も焦点でした。音ではなく「声」のことだと感じはじめる生徒さんたち。
やがて授業の最後、S先生が動画の最後を流します。
沈黙の中でラストシーンに息をのみ、固唾を飲んで食い入るように観つづける生徒さんたち。
シーンの後、その言葉が胸に染みたのか、テロップを見て「ホー」と息を吐く・・・。
人と人とが出合い、「声」を交わすドラマに中学校3年生の生徒さんたちが出会う・・・それは英語を通して、人が「生きる」ということに出会うことなのだ、と思わせてくれます。
よい芝居に前口上はいらない、、、と言います。
わたしの紹介より、この授業のビデオ記録をご覧いただく機会があったらと思います。
同じように動画を活用したN中学校Y先生“Home Alone”の教室のビデオも、もしお許しいただけるなら、何らかの方法でご覧いただくことができたらと願っています。